小西 由希子

携帯電話等中継基地局の設置に関する条例・・・鎌倉市視察報告

4月23日、雨の降る中、鎌倉市役所を訪問しました。

千葉市でも以前から携帯電話等中継基地局の設置に関して、景観面や史跡保存(土気城址)の視点から問題提起がなわれてきました。こうした課題に自治体としてどう取り組むかが問われており、鎌倉市が平成22年携帯電話等中継基地局の設置に関し、住民から陳情をきっかけにして条例を制定したと聞き、その背景と条例の内容についてうかがいたいと思ったからです。

鎌倉市役所で出迎えてくださったのは、議会事務局の谷川さん。
お話ししてくださったのは、まちづくり政策部 まちづくり政策課の渡辺誉志広さんと、経営企画部 市民相談課長 征矢剛一郎さん、課長補佐の 藤井淳二さんです。

鎌倉市の人口は、17万4千人(観光客は年間1,800万人)、議員数(条例と同数)は、28名(男性19名  女性9名)

条例制定の経緯は・・・
背景として、すでに市内3カ所で紛争が起こっていた。
20年9月、21年9月の2回陳情が出され、採択された(全会一致)ことから、条例制定に向けての動きが始まった。10月、11月行政内部で、単独条例にするか,他の条例に付け加えるかの議論があった。
当初「どういう視点で作るか」が焦点であったが、電磁波の問題をどの部署が対応するのかで意見が割れた。保健所なら県が担当であるし、設置を禁止するしないは国が決めるものである。結局、まちづくり政策課と広聴機能を持つ市民相談課の紛争相談窓口(斡旋、調停の専門家を抱えている)とで一緒に作った。
「まちづくり条例」の中に携帯基地についての規定を入れてはどうかとの意見もあったが、開発手続きや紛争予防だけでは対応できないだろうということで、単独条例を作る方向で決まった。(当初条例化までする必要があるのかという声も一部にはあった。)
12月議会・・・単独条例を作るとの答弁
条例案策定にあたっては、対象事業者と直接意見のやりとりをした。(事業者も公共事業との意識が高く、強引に設置を進める気持ちはない)
12/9〜1/20・・パブコメ(条例文そのものでなく,「考え方」について意見を聴取した)・・・一つ一つの文言ではなく考え方への意見がもらえる。行政としても市民意見への返答が行いやすい。
2/16・・・議会に議案(条例案)を上程

条例の内容(特徴)
1.周辺住民への理解を第一にした
 繁華街・・・ビルのオーナーだけでなく、テナントも
 住宅地・・・工作物の高さの2倍の範囲にすむ市民とそれを含む自治会
2.説明会開催の報告書提出義務づけと閲覧

事業者への聞き取り
事業者6社(au、ソフトバンク、NTTドコモだけでなく、ウイルコム(PHS)や今後対象になる可能性のあるUQコミュニケーションやe-モバイルといったモバイル系)を呼んで協議しながら作っていった(行政側は電磁波の知識がないので)。また、総合通信局(国)にも素案を提示して相談した。国からの指示は口頭で、「住民には丁寧な説明が必要」とのこと。事業者側は、条例設置前から既に住民と話し合いをやっており、公共事業としての自負、認識を持っている。

条例への市民や議会の評価・・・十分ではない(電磁波被害については言及していない)が一歩前進

参考にした自治体
・唯一条例を持っている自治体である福岡県糟屋郡篠栗町へも聞き取りをし、思っていた以上の条例(幼稚園など子どもの施設付近への設置は除外することなど)であることを知った。
・独自の条例ではなく他条例や指導要綱などで定めている自治体もある
・国立市・・・建設にあたって説明を要する範囲を影響を及ぼす範囲としたことからどこにも建てられない状況になった→その後工作物の高さの2倍に見直しした
・岩手県盛岡市では建築紛争予防条例の中で他の建築物も含めて規制している(平成14年と17年に改正)・・・用途地域(一種低層地域)はやめるようにとの配慮規定
篠栗町(議員立法)と鎌倉市(執行部)の条例を比較すると、
篠栗町が、幼稚園、学校などの児童関連施設周辺建てることに関して立地規制しているのに対し、鎌倉市は禁止しないが、「配慮すること」とし、住民との紛争を未然に防止するスタンスをとっている。
また、対象は、篠栗町が「15m以上のもの(建築基準法の工作物と同じ)」としたのに対し、鎌倉市は「高さは問わずに全て」としている。

電磁波の影響について
2007年、送電線や家電製品からの低周波電磁界(0Hz〜100kHz)について「環境保健クライテリア」がだされている。ラジオやケータイ電話の無線周波の電磁界(100kHz〜300GHz)のリスク評価(防護指針の方向性)は、2013年(2009年のものが遅れている)WHOからがでる予定。(参考:WHO 電波と安全なくらし)
条例で電磁波被害について言及するには市で根拠を示すしかなく、国でもまだ示されていない段階ではできない。

携帯電話中継基地局建設への要望
ユーザー(市民+観光客)からの要望あり。
最近の傾向では、15mを超える物は無くなり(14.9mなど)、色・形など景観的に配慮されてきた。また、広域用ではなくもっと狭い範囲を対象にするようになっている。今後さらに大容量になったときどうするのか,懸念がある。


感想
鎌倉市では、谷津田地形が多いことによる電波障害と、観光客からの要望もあって携帯電話の中継基地設置が多く設置される背景がある。しかし、一方で電磁波被害を心配する市民の声も高く、いくつもの紛争を抱えており、条例設置が強く望まれていた。
条例案づくりにはかなり専門的な知識も必要であり、事業者側も紛争を望まないことから、市が積極的に事業者と話し合いをもって策定したことが特徴でもある。
高さを問わず全ての電波塔を対象にしたこと、工作物の高さの2倍の範囲にすむ市民とそれを含む自治会を対象にしたこと、自治会長への説明がすなわち住民への説明であるとしたこれまでの考え方から一歩進んで説明会開催の報告書を事業者に提出させそれを閲覧に供することとしたことなどが特徴である。
電磁波被害については国レベルでの方針が出されていない中、自治体でこうした条例を作ることは困難であったと思われるが、2回の陳情によって市民が押し上げて作らせた条例であり民意の高さがうかがわれる。一方で、設置にあたっては住民同士の話し合いと合意を得ることが求められており、今後いっそう市民の民度が問われることになると思われる。
今後いっそう携帯電話に多様な機能が求められるようになりさらに多くの電波塔設置が予想される。一人一人がリスクを裏側にどこまでの便利さを求めるのかが問われている。また、国としてもどの方向を目指すのか十分な議論が必要である。健康被害についてはWHOのリスク評価が待たれるが、便利さの裏側にある危険性についても積極的に情報公開し、わかりやすく市民に知らせる努力が必要である。2013年には電磁波による影響が国際的にも示されるとのことで注視していきたい。
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